「ギフト券や商品券を購入したとき、消費税はかかるのだろうか?」これは経理担当者だけでなく、一般の消費者にとっても非常に疑問に感じるポイントです。
結論から申し上げます。ギフト券の購入時、原則として消費税はかかりません(非課税)。消費税が課税されるのは、そのギフト券を使って実際に商品やサービスと交換したときです。
この記事では、ギフト券の購入時と利用時の消費税の正しい取り扱いと、企業における具体的な経理処理の方法について、分かりやすく解説します。
ギフト券の基本的な消費税上の位置づけ
多くの人が誤解しやすいポイントですが、ギフト券は「モノ」ではなく、将来的にモノやサービスと交換できる「金券」として扱われます。
ギフト券が消費税法上の「支払い手段」であること
消費税法において、ギフト券や商品券は「有価証券等」に分類されます。これは、それ自体が価値を持つというよりも、将来的な支払い手段としての機能を持つからです。
課税取引の対象となるタイミングの明確化
消費税は、国内で行われる「資産の譲渡等」(消費活動)に対して課税されます。ギフト券を単に購入しただけでは、まだ具体的な消費活動が行われていないと見なされます。
ギフト券は消費税の課税対象外とされる「有価証券等」に該当するため、購入した時点では非課税取引となります。
【購入時】なぜギフト券の購入は非課税なのか?
ギフト券を購入しても、その時点ではまだ具体的な消費活動が行われていないため、課税対象とはなりません。これは消費税の基本的な考え方に基づいています。
資金移動の性質を持つため
ギフト券の購入は、現金をギフト券という形に替えただけの「資金の移動」と解釈されます。まだ何の消費も完了していないため、消費税の対象外です。
「二重課税」を防ぐための措置
もし購入時に課税され、さらに利用時にも課税されると、一つの消費に対して二重に税金がかかってしまいます。この二重課税を避けるために、購入時は非課税と定められています。
購入時に課税すると、利用時にも再度課税され二重課税になるため、ギフト券の購入は消費税法上、非課税取引と定められています。
【利用時】課税のタイミングはいつ発生するのか?
ギフト券が実際に商品やサービスと交換されたときに初めて、消費税が課税されるタイミングが発生します。ここで初めて「消費」が行われたと見なされるからです。
課税対象となる商品やサービスとの交換
利用時に消費税がかかるかどうかは、そのギフト券で何を購入したかによって決まります。例えば、食品(軽減税率対象)や電化製品(標準税率対象)を購入した場合は課税取引です。
利用時の消費税計算方法
ギフト券で支払った場合でも、現金やクレジットカードで支払った場合と同じように、購入した商品・サービスの本体価格に消費税率を乗じて計算されます。
重要なのは、決済手段がギフト券であっても、交換した商品やサービスの内容によって消費税の課税・非課税が決まる点です。
商品券とプリペイドカードの消費税の違い
紙の商品券やギフトカードだけでなく、電子的なプリペイドカードや特定の交通系ICカードへのチャージも、消費税の取り扱いについては基本的に同じルールが適用されます。
一般的な商品券(紙)の扱い
デパートの商品券やビール券などの紙の金券類は、先に述べた通り「有価証券等」として購入時は非課税、利用時に課税です。
電子マネー・プリペイドカードの取り扱い
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードへのチャージや、Amazonギフトカードなどの電子マネー購入も、原則として前払い(資金移動)と見なされ非課税です。
形式の違いはあっても、いずれも物品を交換するための前払い手段であるため、購入時は非課税、利用時に課税されるという扱いに大きな差はありません。
経理処理:ギフト券購入時の勘定科目と仕訳
企業がギフト券を購入する場合、経費ではなく一時的な資産として処理することが、消費税の正しい経理処理のために非常に重要です。
基本的な勘定科目は「貯蔵品」
未使用のギフト券は、将来的な消費のために備えている資産と見なされます。そのため、購入時は「貯蔵品」として資産計上するのが一般的です。
仕訳例(現金で購入した場合)
例:現金5万円でギフト券を購入した場合の仕訳(非課税仕入れ)
借方:貯蔵品 50,000円 / 貸方:現金 50,000円
ギフト券を購入した際は、使用するまでは一時的な「貯蔵品」として資産計上し、消費税の課税対象外として処理します。
経理処理:ギフト券利用(決済)時の勘定科目と仕訳
利用した際は、購入時と異なり、その使途に応じた経費の勘定科目に振り替える処理が必要です。この時初めて、消費税の課税仕入れとして処理されます。
利用目的による勘定科目の分類
ギフト券を取引先への贈答に使えば「交際費」、従業員へのインセンティブに使えば「福利厚生費」または「給与」として処理されます。
仕訳例(接待交際費として利用した場合)
例:購入していたギフト券1万円分を接待交際費として利用した場合(課税仕入れ)
借方:交際費 10,000円 / 貸方:貯蔵品 10,000円
ギフト券の利用時は、貯蔵品を減らし、使途に応じた課税仕入れ(交際費、福利厚生費など)として正しく計上する必要があります。
企業が贈答品としてギフト券を渡す場合の注意点
取引先や従業員にギフト券を渡す場合、消費税の処理とは別に、所得税や法人税上の取り扱いが複雑になるため注意が必要です。
交際費または給与としての取り扱い
取引先に渡す場合は「交際費」となり、損金算入に制限がある場合があります。従業員に渡す場合は原則として「給与」と見なされ、源泉徴収の対象になることがあります。
5,000円以下の基準の適用
得意先への贈答品として5,000円以下のギフト券を渡す場合、一定の要件を満たせば「交際費」から除外できる特例がありますが、細かな税務判断が必要です。
贈答目的でギフト券を渡す際は、その用途と金額に応じて、交際費または給与課税の対象になるかを慎重に判断しましょう。
消費税インボイス制度とギフト券の関わり
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、ギフト券の経理処理にどのように影響するのか、そのポイントを確認しておきましょう。
購入時のインボイスは原則不要
ギフト券の購入は非課税取引であるため、消費税法上の仕入れ税額控除の対象となりません。したがって、購入時に適格請求書(インボイス)を受け取る必要はありません。
利用時のインボイスの必要性
ギフト券を利用して課税対象の商品を購入した場合、その購入先が発行するインボイスが必要です。これにより、企業はその消費に対する仕入れ税額控除を受けることができます。
ギフト券の購入自体は非課税取引のためインボイスは不要ですが、利用して課税商品を買う際は、利用先の適格請求書を必ず保管してください。
よくある質問
ギフト券の購入時に、発行元からインボイスをもらう必要はありますか?
いいえ、必要ありません。ギフト券の購入は非課税取引(不課税)であるため、仕入れ税額控除の対象外です。したがって、インボイス(適格請求書)の保存義務は発生しません。
海外のオンラインギフトカード(例:US Amazonギフトカード)を購入した場合も非課税ですか?
はい。日本の消費税は国内取引に対して課税されるため、海外のオンラインプラットフォームから購入したギフトカードについても、日本の消費税はかかりません。
ギフト券を額面よりも安く割引価格で購入した場合、消費税の扱いはどうなりますか?
割引購入した場合でも、ギフト券の購入自体は非課税のままです。割引によって生じた差額は、原則として「雑収入」として計上しますが、消費税の課税対象にはなりません。
ギフト券を使って非課税の商品(例:切手や商品券)を購入した場合の処理は?
ギフト券を利用したとしても、購入したものが非課税商品であれば、その取引は非課税仕入れとして扱われます。消費税が課税されるのは、あくまで課税対象のモノやサービスを購入したときです。
企業が従業員への福利厚生として「社食利用券」を配る場合の消費税は?
社食利用券が実質的に食事の提供を担保しており、従業員に経済的利益を与えている場合、その利用券の額面相当額は「課税仕入れ」として福利厚生費で処理することが可能です。
まとめ
ギフト券の消費税の取り扱いは、「購入時非課税、利用時に課税」という原則を理解していれば難しくありません。購入時は資金の移動と見なされ、利用時に初めて「消費」が発生するためです。
企業が経理処理を行う際は、購入時は貯蔵品(非課税仕入れ)として資産計上し、利用時に使途に応じた経費(課税仕入れ)に振り替える作業を忘れないようにしましょう。
特にインボイス制度下では、ギフト券を購入したこと自体ではなく、ギフト券を使って商品を購入した際の領収書やインボイスが重要になります。正確な経理処理のため、これらの証拠書類を確実に保存してください。